「API」という言葉を説明する記事の多くは、「レストランでの注文(客・ウェイター・厨房)」という例え話を使いますが、この例えはあまりに定番化していて、かえって実感が湧きにくくなっています。この記事では、別の例えを使いながら、非エンジニアの方にもビジネス上の意義が伝わるようにAPIを解説します。

APIとは何か

API(Application Programming Interface)とは、ソフトウエア同士が情報をやり取りするための「窓口」や「決まり事(規格)」のことです。身近な例で考えると、自動販売機に似ています。私たちは自動販売機の中で飲み物がどう冷却され、在庫がどう管理されているかを知らなくても、「硬貨を入れてボタンを押す」という決まった操作をすれば、決まった結果(飲み物)を受け取れます。APIも同じで、あるソフトウェアの内部の仕組みを知らなくても、「決まった形式でリクエストを送れば、決まった形式でレスポンス(結果)が返ってくる」という窓口が用意されていれば、外部のソフトウェアがその機能を利用できるのです。

Web APIとREST API

特にインターネット経由でアプリ同士をつなぐ仕組みを「Web API」と呼びます。そして、Web APIの設計方式の一つが「REST API」です。REST APIは、Webサイトを見るときと同じような「URL」と「HTTPメソッド(取得・登録・更新・削除といった操作の種類)」の組み合わせで、直感的にデータをやり取りできるように設計されており、多くの場合レスポンスには「JSON」というデータ形式が使われます。REST APIの設計ルールをさらに詳しく知りたい方は別記事「REST APIとは?6つの原則・HTTPメソッド・設計の考え方を実務目線で解説」、JSONの基本については「JSONとは?データ形式の基本とAPIでの使われ方をわかりやすく解説」もあわせてご覧ください。

企業がAPIを活用するビジネス上のメリット

多くの解説記事は技術的な仕組みの説明で終わってしまいますが、経営者・IT担当者にとって重要なのはビジネス上のメリットです。

  • システム間連携の自動化:会計ソフトと銀行口座、勤怠システムと給与計算ソフトなど、別々のシステム間でデータを手作業で転記する必要がなくなり、二重入力によるミスや手間を減らせます
  • 他社サービスとの連携:自社のサービスに他社の便利な機能(決済、地図、AI等)をAPI経由で組み込むことで、自社ですべてを開発しなくても機能を拡充できます
  • 新規サービスの創出:自社が保有するデータや機能をAPIとして外部に公開することで、他社がそれを活用した新しいサービスを生み出す土台になることもあります

「APIエコノミー」という考え方

企業がAPIを介して互いにサービスを連携し合うことで、単独では生み出せない新たな価値や経済圏が生まれる、という考え方を「APIエコノミー」と呼びます。経済産業省は2017年に「クレジットカードデータ利用に係るAPI連携に関する検討会」を開催し、総務省も「平成30年版情報通信白書」で「API公開の効果と課題」を特集するなど、国としてもAPI連携の重要性に言及しています。

特に金融分野では、この考え方が法制度にも反映されています。銀行法には「電子決済等代行業」という制度があり、銀行と外部の事業者(会計ソフト会社等)がオープンAPIの利用契約を結ぶ仕組みが法的に整備されています。金融庁はこの契約に関する条文例まで公表しており、APIエコノミーが単なる技術トレンドではなく、制度として位置づけられていることがうかがえます。

データ連携の方法を比較する:手動・CSV・API・EDI

システム間でデータをやり取りする方法は、API連携だけではありません。それぞれの特徴を整理すると、自社にとってどこまでの連携が必要かを判断しやすくなります。

連携方法 リアルタイム性 導入の手間 ミスの起こりやすさ
手動転記 都度・遅い ほぼ不要(すぐ始められる) 高い(入力ミス・漏れが発生しやすい)
CSVエクスポート・インポート 手動実行のタイミング次第 低い(多くのソフトが標準対応) 中程度(形式の食い違いに注意)
API連携 ほぼリアルタイム〜自動更新 中〜高(サービス側の対応要) 低い(システム間で自動処理)
EDI(企業間電子データ交換) バッチ処理が中心 高い(専用の回線・規約が必要なことが多い) 低い(ただし規格の統一に手間がかかる)

取引量が少ないうちは手動転記やCSVでも十分なケースが多く、API連携は「同じ作業を繰り返し行っている」「入力ミスによるトラブルが目立つ」といった課題が具体化してから検討するのが現実的です。なお、CSVでのやり取りは文字コードの食い違いによる文字化けが起きやすい点にも注意が必要です。

APIとWebhookの違い:どちらから声をかけるか

APIと並べてよく語られるのが「Webhook(ウェブフック)」です。違いは通信の起点にあります。APIは必要なときにこちらから取りにいくのに対し、Webhookは変化が起きたときに相手から送られてくる仕組みです。そのためAPIだけで「変化を知りたい」を実現しようとすると、繰り返し問い合わせるポーリングが必要になり、空振りの通信と遅延が発生します。一方でWebhookは、インターネットから到達できる受信用URLを用意する必要があり、署名検証や重複通知への対策も求められます。詳しくは Webhookとは?APIとの違いと受け取る側が気をつけること をご覧ください。

中小企業がAPIを意識する具体的な場面

実は、多くの中小企業は意識しないうちにAPIの恩恵を受けています。会計ソフトのfreeeやマネーフォワードは、銀行口座とAPI連携することで、パスワードを保存することなく取引明細を自動的に取り込む機能を提供しています。freeeは270以上のAPIエンドポイントを公開しており、三井住友銀行もインターネットバンキングサービスでfreeeやマネーフォワードとのAPI連携に対応しています。

また、別記事「ノーコード・ローコードとは?中小企業向けツール比較」で紹介したようなノーコードツールでも、API連携は重要な役割を果たしています。例えば「Zapier」というノーコードの連携ツールは7,000以上のサービスとつながっており、kintoneと組み合わせて「日報が提出されたら自動でスプレッドシートに集計し、Slackに通知する」といった業務自動化を、プログラミングなしで実現できます。

API利用時に気をつけたいセキュリティ

APIを利用する際は、セキュリティ面への配慮も欠かせません。IPA(情報処理推進機構)は「API標準設計ガイド」の中で、通信の暗号化(HTTPS)の必須化、過度なアクセスを制限するレートリミット、APIキーによる認証といった対策の重要性を挙げています。API利用の際に発行される「APIキー」が漏えいすると、不正利用による課金被害、他のシステムへの不正アクセスの踏み台にされる、業務システムの停止に追い込まれるといった被害につながる可能性が指摘されています。多くの解説記事はこの点に触れていませんが、実務上は無視できないポイントです。

自社にとってAPIはどう関係するか

中小企業の多くにとって、自社でAPIを新たに開発する必要はほとんどありません。むしろ重要なのは、すでに利用しているクラウドサービス(会計ソフト、勤怠管理ツール等)が、他のサービスとAPI連携できる機能を備えているかを確認し、それを「使う側」として活用することです。前述のZapierのようなノーコードツールを使えば、プログラミングの知識がなくても、API連携による業務自動化を実現できます。クラウドサービスの基礎については、別記事「中小企業にクラウド移行はなぜ必要か?」もあわせてご覧ください。

API連携を検討する際の3ステップ

実際にAPI連携を検討する場合、いきなり専門業者に相談するのではなく、まず社内で以下の3点を整理しておくと話がスムーズに進みます。

  1. 手作業のどこにボトルネックがあるかを洗い出す:「毎月〇時間かけて銀行明細を会計ソフトに手入力している」など、具体的な作業内容と時間を数値化します
  2. 使っているサービス同士が、そもそもAPI連携に対応しているかを確認する:対応していなければ、API連携自体ができないため、まずここを確認します
  3. ノーコードツールで実現できるか、専門的な開発が必要かを見極める:Zapierやサービス標準の連携機能で足りるケースも多く、必ずしも外部のシステム開発会社に依頼する必要はありません

この3ステップを踏むことで、「大掛かりなシステム開発が必要」と思い込んでいた課題が、実は既存サービスの標準機能や、月数千円程度のノーコードツールで解決できるケースも少なくありません。

よくある質問

Q. APIを使うにはプログラミングの知識が必要ですか?

自社でAPIを一から開発する場合はプログラミングの知識が必要ですが、既存のクラウドサービス同士をAPI連携させるだけであれば、Zapierのようなノーコードツールを使うことで、プログラミング知識がなくても実現できます。

Q. APIキーはどのように管理すればよいですか?

APIキーはパスワードと同様に、他人に知られないよう厳重に管理する必要があります。ソースコードやメールに直接書き込まず、専用の管理ツールや環境変数を使って保管する、定期的にキーを再発行する、といった対策が推奨されています。

Q. 無料で使えるAPIと有料のAPIの違いは何ですか?

多くのAPIは、利用回数やデータ量に応じた無料枠が用意されており、それを超えると従量課金になる仕組みが一般的です。導入を検討する際は、想定する利用量に対して料金プランが見合っているかを事前に確認することをおすすめします。

Q. 自社のシステムがAPIに対応しているか、どうやって確認すればよいですか?

まずは利用中のクラウドサービス(会計ソフト、勤怠管理ツール、ECカート等)の公式サイトで「API」「外部連携」「他社サービスとの連携」といったページがないか確認しましょう。多くのSaaSは「連携アプリ一覧」や「Marketplace」といった形で、対応済みのAPI連携先を公開しています。見当たらない場合は、契約しているベンダーのサポート窓口に問い合わせるのが確実です。

参考にした主な調査・資料

まとめ

APIは、ソフトウェア同士が情報をやり取りするための「窓口」であり、中身の仕組みを知らなくても決まった手順で機能を利用できる点が自動販売機に似ています。中小企業にとっては、自社でAPIを開発することよりも、既存のクラウドサービスが提供するAPI連携機能を活用し、業務の自動化につなげることの方が現実的で効果の大きい活用法です。