別記事「物流DXとは?2024年問題・法改正・補助金までまとめて解説」では、2024年問題の制度そのものを整理しました。この記事では、2024年4月の規制施行から約2年が経過した時点で、実際に業界に何が起きたのか、データと実例に基づいて検証します。

倒産動向:高止まりする物流業界

民間調査会社の集計では、道路貨物運送業の経営環境の厳しさがはっきりと数字に表れています。帝国データバンクの調査(年度ベース)によると、道路貨物運送業の倒産件数は2024年度351件、2025年度321件とやや減少したものの、過去4番目の高水準です。特に人手不足を主因とする倒産は、2025年度上半期だけで33件と、前年同期の19件から急増しています。東京商工リサーチの調査(暦年ベース)でも、2023年328件から2024年374件へと前年比14%増加し、4年連続の増加となりました。うち人手不足関連倒産は79件で、集計開始以来最多を記録しています。集計期間や対象範囲が調査会社によって異なる点には注意が必要ですが、両社とも「高止まり」という評価で一致しています。

運賃は上がったのか:「標準的な運賃」の浸透状況

国土交通省は2024年3月、「標準的な運賃」の水準を約8%引き上げる告示を行いましたが、実際にどこまで浸透したかは別の問題です。2025年3月の国土交通省調査では、この標準的な運賃の8割以上を実際に収受できている事業者は約45%にとどまっており、制度としての運賃引き上げが現場に十分に反映されているとは言い切れない状況です。

配送遅延・引き受け拒否は実際に起きたか

荷主側への実害も一定程度確認されています。経済産業省北海道経済産業局が2025年4月に公表した調査(回答74事業者)では、約1割が実際に輸送を断られた経験があると回答しました。全日本トラック協会の独自調査でも、15.7%の事業者が輸送を断っているという結果が出ており、「運びたくても運べない」状況が一部で現実化していることがうかがえます。

私たちの生活への影響:宅配便の値上げと再配達率

消費者にとって最も分かりやすい変化は、宅配便の値上げです。ヤマト運輸は2024年4月に約2%の値上げを行い、2025年10月にはさらに平均約3.5%(200サイズで750円)の値上げを実施しました。佐川急便も2024年4月、飛脚宅配便の運賃を平均約7%引き上げています。Amazonも2024年3月、送料無料になる購入金額のラインを2,000円から3,500円に引き上げました。

一方で、対策も進んでいます。再配達率(国土交通省調査)は2022年10月の10.6%から2025年4月には8.4%まで低下しました。ただし、政府が掲げる目標の6%にはまだ届いていません。

主要指標の変化を一覧で見る

ここまで紹介したデータを整理すると、施行前後で次のような変化が確認できます。

指標 施行前後の変化
運輸業倒産件数(TSR、暦年) 2023年328件 → 2024年374件(前年比14%増)
人手不足関連倒産(TSR) 2024年79件(集計開始以来最多)
標準的な運賃の8割以上収受 2025年3月時点で約45%の事業者にとどまる
宅配便再配達率 2022年10月10.6% → 2025年4月8.4%(政府目標6%には未達)
1運行あたり拘束時間 2020年度比で約40分短縮
ダブル連結トラック特殊車両通行許可台数 2019年14台 → 2022年205台(約15倍)

労働時間の短縮や再配達率の低下など、規制の直接的な効果が表れている指標がある一方、倒産件数や運賃浸透率のように、まだ改善が追いついていない指標も併存しているのが現状です。

企業はどう対応したか:モーダルシフトと共同配送の広がり

企業側の対応として広がりを見せているのが、トラック輸送を鉄道・船舶に切り替える「モーダルシフト」や、複数の企業が輸送を共同で行う「共同配送」です。ブルボンと岩塚製菓は、2台のトラックを連結して輸送する「ダブル連結トラック」を使った共同配送を2025年7月に本格運行させました。サントリーとサッポロビールは、岡山〜群馬間で互いの製品を往復輸送する取り組みを行い、年間で約150台分のトラック輸送削減を見込んでいます。ダブル連結トラックの特殊車両通行許可台数は、2019年の14台から2022年には205台へと、わずか3年で約15倍に増加しました。鉄道貨物輸送を担うJR貨物の2025年度輸送量も、前年比0.5%増とわずかながら増加しています。

国土交通省・全日本トラック協会の公式評価

国土交通省が公表した「国土交通白書2025」では、1運行あたりの拘束時間が2020年度比で約40分短縮された一方、荷待ち・荷役の時間は「ほぼ横ばい」であると評価されています。つまり、労働時間そのものは規制の効果で短縮されつつある一方、荷主側の都合による待ち時間の削減は、まだ十分に進んでいないのが実態です。全日本トラック協会が2025年3月に実施した調査(回答2,973事業者)では、6割超がドライバー不足を訴え、3割が受注量の削減を余儀なくされたと回答した一方、約8割の事業者が過去1年以内に賃上げを実施したと回答しています。

2026年4月のCLO義務化に向けた準備状況

物流DXプラットフォームを提供するHacobu社が2026年1〜2月に実施した調査(特定荷主に該当する101社が対象)によると、物流統括管理者(CLO)を「選任済み」と回答した企業は30.7%、「選任予定」を含めると76.2%に達しています。一方で、義務化のもう一つの柱である中長期計画について「対応済み」と回答した企業はわずか7.3%にとどまっており、人材配置は進みつつあるものの、具体的な計画の策定はこれからという企業が多いことがうかがえます。

中小企業がこの状況から学ぶべきこと

ここまでのデータから見えてくるのは、「規制はドライバーの労働時間を確かに短縮させたが、荷待ち時間の削減や運賃の適正化といった、荷主側の協力が不可欠な部分は道半ば」という実態です。中小企業にとっての教訓は次の2点です。

  • 荷主としての立場にある企業は、自社の荷待ち・荷役の実態を見直す価値が大きい:規制強化の効果が及びにくい領域だからこそ、自社が主体的に改善に取り組むことで、取引先の運送会社との関係を有利に保てる可能性があります
  • 値上げは今後も段階的に続く前提で、コスト構造を見直す:宅配便・運送費の値上げは一時的なものではなく、構造的な要因(ドライバー不足)が続く限り、今後も繰り返される可能性が高いと考えられます
  • 取引先の運送事業者の経営状況にも目を向ける:倒産件数が高止まりしている以上、日頃取引している運送会社が突然事業を継続できなくなるリスクもゼロではありません。主要な配送ルートについて、代替手段を検討しておくことも一つの備えになります

今後の焦点:2026年度以降に何が起きるか

2026年4月からは特定事業者へのCLO選任・中長期計画提出が義務化され、2027年度からは定期報告も始まります。前述のHacobu社の調査結果からもわかるとおり、人材面(CLO選任)の対応は進みつつある一方、計画内容の具体化はこれからという企業が大多数です。今後1〜2年は、「制度への形式的な対応」から「実際に荷待ち・荷役時間を減らす具体的な取り組み」へと、企業の対応の重心が移っていく時期になると考えられます。中小企業にとっても、取引先である大企業・特定事業者がこうした取り組みを本格化させる中で、共同配送や納品条件の見直しといった協力を求められる場面が増えてくる可能性があります。

よくある質問

Q. 2024年問題はもう「終わった」問題なのですか?

そうではありません。2024年4月の労働時間規制はスタート地点にすぎず、2025年度の努力義務、2026年4月のCLO義務化など、対応すべき制度は段階的に増えていきます。倒産件数も高止まりが続いており、問題そのものは現在進行形です。

Q. 荷待ち時間が減らないのはなぜですか?

荷待ち時間の削減には、運送事業者側の努力だけでなく、荷主側の入出荷体制の見直し(予約システムの導入、荷役作業の効率化等)が不可欠なためです。運送事業者だけで解決できる問題ではない、という点が構造的な難しさになっています。

Q. 中小企業の運送会社も倒産リスクが高いのでしょうか?

統計上、人手不足を主因とする倒産が増加傾向にあり、体力の弱い中小の運送事業者ほど影響を受けやすいと考えられます。取引先に中小運送事業者がいる場合は、運賃交渉や取引条件の見直しについて、自社から前向きに協議する姿勢が今後より重要になってきます。

Q. モーダルシフトは中小企業でも取り組めますか?

ダブル連結トラックや鉄道貨物への全面切り替えは、一定の物流量がなければ効果を出しにくく、大企業同士の連携事例が中心です。ただし、同業他社や近隣企業との共同配送であれば、中小企業同士でも取り組める規模のものがあり、荷主同士が声をかけ合うところから検討を始める価値があります。

参考にした主な調査・資料

まとめ

物流の2024年問題は、労働時間の規制強化という点では一定の効果を上げつつも、倒産件数の高止まり、運賃浸透の道半ば、荷待ち時間の横ばいなど、課題が残ったまま2026年4月のCLO義務化という次の段階に突入しつつあります。中小企業にとっては、規制の直接対象でなくても、荷主としての行動や取引先との関係の見直しを通じて、今からできる備えがあります。物流DX全体の制度整理については、別記事「物流DXとは?2024年問題・法改正・補助金までまとめて解説」もあわせてご覧ください。