「IT導入補助金」→「デジタル化・AI導入補助金」への名称変更まとめ|変更点・申請スケジュールを解説
中小企業のIT導入を支援する定番の補助金「IT導入補助金」が、2026年度から「中小企業デジタル化・AI導入支援事業費補助金」(通称:デジタル化・AI導入補助金)という名称に変わりました。「名前が変わっただけ?」「中身も大きく変わったの?」と気になっている方に向けて、確認できている変更点とスケジュールを整理します。
※本記事は2026年7月4日時点の情報をもとに作成しています。制度の詳細は必ず事務局公式サイトの最新の公募要領でご確認ください。
いつ、何が変わったのか
令和7年度補正予算事業から、制度名称が「IT導入補助金」から「デジタル化・AI導入補助金」へと変更されました。事務局からは2026年1月23日付で告知が出ており、2025年度分(IT導入補助金2025)については従来どおり旧名称のまま運用されています。つまり、2026年度から申請する制度が新名称に切り替わった、という整理です。
名称変更の理由:仕組みは大きく変わらない
この名称変更について、中小企業庁の担当者はミラサポplusのインタビューで「中小企業等にもAIを活用した業務改善の可能性を広く知ってもらうため」と説明したうえで、「制度の基本的な仕組みや補助対象はこれまでのIT導入補助金と大きく変わるものではない」と明言しています。
つまり、名称にAIという言葉が加わったのは「AI活用への注目を促す」という広報的な意味合いが強く、申請の枠組みそのものが根本から変わったわけではない、という点をまず押さえておくとよいでしょう。「AIを導入しないと申請できなくなった」というわけではなく、あくまで従来型の業務効率化ツールも引き続き対象になります。
申請枠の構成
デジタル化・AI導入補助金には、目的に応じて複数の申請枠が用意されています。名称変更後も大枠の構成は維持されており、代表的な枠は次のとおりです。
- 通常枠:業務効率化・売上向上に資するITツール全般が対象となる、最も利用されている枠
- インボイス枠:インボイス制度に対応した会計・受発注・決済ソフト等が対象。ソフトウェアとセットであれば、PC・タブレット・レジ等のハードウェア購入費も対象に含まれる場合があります(ハードウェア単体では対象外)
- セキュリティ対策推進枠:サイバーセキュリティお助け隊サービス等、セキュリティ対策に関する費用が対象
- 複数者連携枠:商店街・組合など複数の中小企業が連携してデジタル化に取り組む場合に利用できる枠(名称変更後は「複数者連携デジタル化・AI導入枠」に改称)
自社がどの枠に該当するかによって対象経費や上限額が異なるため、まずは自社が導入したいツールがどの枠に当てはまるかを確認するところから始めるとよいでしょう。
具体的に確認できている変更点
- 制度名称:「中小企業デジタル化・AI導入支援事業費補助金」に変更
- 申請枠の名称:「複数者連携IT導入枠」が「複数者連携デジタル化・AI導入枠」に改称。通常枠・インボイス枠・セキュリティ対策推進枠・複数者連携枠という4系統の大枠自体は維持されています
- ITツール検索の表示:登録ツールを検索する際に、AI関連機能の有無で絞り込みやすくする表示が加わったとの情報があります
なお、AI活用の加点措置や、ITツール登録時のAI機能申告義務化などを取り上げる解説記事も見られますが、本記事の執筆時点では公募要領本文での文言確認ができておらず、情報源によって表現の食い違いも見られます。この点は断定を避け、申請前に公募要領原文を確認することをおすすめします。
変わっていない点(旧制度から続いていること)
- 補助率・上限額の基本設計(通常枠は補助率1/2以内、賃上げ要件を満たすと2/3、上限は業務プロセス数に応じて5万円台〜450万円程度)
- GビズIDプライムの取得、SECURITY ACTIONの宣言といった申請要件
- IT導入支援事業者からの招待を受けてマイページを登録し、その事業者が扱う登録済みツールから選定する仕組み
- 交付後3年間の事業計画(労働生産性の向上目標や賃上げ要件)の提出義務
3年間の事業計画で具体的に何を準備すべきかについては、別記事「デジタル化・AI導入補助金の申請要件とは?3年間の事業計画で中小企業が準備すべきこと」で詳しく解説しています。
2026年度の申請スケジュール
交付申請の受付は2026年3月30日に開始されています。主な締切の目安は以下のとおりです(今後の公募回によって変動するため、必ず公式サイトで最新情報を確認してください)。
- 通常枠等(1〜3次締切):2026年7月21日17:00締切、交付決定は9月2日ごろの予定
- 複数者連携枠(1〜2次締切):2026年8月25日締切、交付決定は10月7日ごろの予定
- 4次公募以降のスケジュールは本記事執筆時点では未公表です
こんな企業にはこの制度がおすすめ
デジタル化・AI導入補助金は、次のような状況にある中小企業にとって特に活用しやすい制度です。
- 会計・受発注・勤怠管理などの業務をいまだにExcelや紙で管理しており、クラウド型のITツールに切り替えたいと考えている企業
- インボイス制度への対応を機に、会計ソフトやレジシステムを刷新したい企業
- 取引先からセキュリティ対策の状況を問われる機会が増え、対策サービスの導入を検討している企業
- 商店街・組合など、複数の事業者が連携して足並みをそろえてデジタル化に取り組みたい場合
逆に、既に十分なITツールを導入済みで新たな投資の予定がない企業や、3年間の事業計画に伴う生産性向上・賃上げの実行が難しい企業にとっては、無理に申請する必要はありません。補助金はあくまで手段であり、自社の経営課題の解決に本当に役立つかどうかを起点に検討することが大切です。
過去に「IT導入補助金」を利用したことがある事業者への影響
過去にIT導入補助金を受給したことがある事業者に対しては、2026年度分で給与総額の伸び率などがより厳しく設定される可能性があるとの情報があります。この点は本記事執筆時点で一次資料での文言確認ができておらず、確定的な情報として扱うことは避けますが、過去に受給歴がある事業者は、通常の要件との違いがないか特に注意して公募要領を確認することをおすすめします。
申請にあたって注意しておきたいこと
制度名が変わったことで、ネット上には旧名称「IT導入補助金」のまま更新が止まっている解説記事も多く残っています。検索結果を見るときは、その記事がいつ書かれた情報なのかを必ず確認し、最終的な判断材料は事務局公式サイトの公募要領原文を使うようにしてください。
IT導入支援事業者選びのポイント
デジタル化・AI導入補助金は、原則としてIT導入支援事業者を介した申請になるため、パートナー選びが手続きのスムーズさを大きく左右します。選定にあたっては、次のような点を確認するとよいでしょう。
- 導入したいITツールの取り扱い実績が豊富か
- 自社の業種・業務内容への理解があるか(一般的な説明だけでなく、具体的な活用イメージを提示してくれるか)
- 交付申請書類の作成や事業計画の策定について、どこまでサポートしてくれるか
- 採択後のフォロー体制(導入後の操作サポートや、事業計画の実行支援など)が用意されているか
複数のIT導入支援事業者から話を聞き、単に「補助金が使える」という説明だけでなく、自社の課題解決にどう役立つかを具体的に提案してくれるかどうかで比較することをおすすめします。
よくある質問
Q. 「IT導入補助金」で検索して出てくる古い記事の情報は使えますか?
制度の大枠(対象経費や申請の流れ)は共通する部分が多いものの、補助率・上限額・スケジュールなど数値に関わる情報は年度・公募回で変わるため、古い記事の数値をそのまま使うのは避け、必ず該当年度の公募要領で最新情報を確認してください。
Q. すでにIT導入支援事業者と話を進めていますが、名称変更で手続きが変わりますか?
申請の基本的な流れ(IT導入支援事業者からの招待を受けてマイページ登録する仕組み)自体に大きな変更はないとされています。ただし、申請システムの画面表示や提出書類の様式が更新されている可能性があるため、担当のIT導入支援事業者に最新の手続きを確認しながら進めるとよいでしょう。
Q. どの枠に申請すればよいか迷っています。何を基準に選べばよいですか?
まずは「何のためにITツールを導入したいか」を明確にすることが出発点です。インボイス対応の会計ソフトを検討しているならインボイス枠、セキュリティ対策サービスを導入したいならセキュリティ対策推進枠、といったように目的に合わせて枠を選び、判断に迷う場合はIT導入支援事業者に相談することをおすすめします。
Q. 複数の枠に同時に申請することはできますか?
制度上、複数の枠に重複して同じ経費を計上することはできませんが、目的が異なる複数のツール導入であれば、それぞれ適した枠で個別に検討することは可能です。例えば、会計ソフトの刷新はインボイス枠、セキュリティ対策サービスの導入はセキュリティ対策推進枠、といったように使い分けることも選択肢になります。ただし同一年度内で複数申請する場合の細かいルールは変わる可能性があるため、必ず公募要領で確認してください。
参考にした主な調査・資料
まとめ
「デジタル化・AI導入補助金」は、名称こそ大きく変わったものの、基本的な補助対象・申請要件は従来のIT導入補助金を引き継いでいます。名称変更に気を取られすぎず、「自社がやりたいITツール導入に、どの枠が使えるか」という視点で公式サイトの最新情報を確認しながら準備を進めるとよいでしょう。